壁紙の張り替え現場で三十年以上のキャリアを持つベテランの職人に、なぜ壁紙のひびが起きるのか、そしてそれを防ぐためにどのような工夫を凝らしているのかというインタビューを行いました。彼によれば、壁紙のひびの成否は、実は壁紙を貼る前の下地作りに八割の比重があると言います。多くの現場で目にするひびは、下地である石膏ボードの繋ぎ目が動くことで発生しますが、これを防ぐためにプロはボードの貼り方からこだわります。例えば、ドアの角などの力がかかりやすい場所には、わざとボードの継ぎ目がこないようにL字型にカットしたボードを貼るなど、応力を分散させる工夫を凝らすそうです。また、最近の住宅は高気密・高断熱化が進んでおり、二十四時間換気システムの影響で室内が一年中乾燥しやすくなっていることも、壁紙のひびが増えている要因だと指摘します。急激な乾燥は糊の乾燥収縮を招き、壁紙を引っ張りすぎてしまうため、彼は施工中の現場の湿度管理にも細心の注意を払っています。さらに、ひび割れ防止の強力な武器として彼が挙げるのが、下地処理で使用する特殊な補強テープです。従来の紙テープではなく、伸縮性に富んだガラス繊維のテープを使用し、その上から収縮の少ない高品質なパテを三段階に分けて丁寧に塗り重ねることで、地震や木材の伸縮による動きを壁紙に伝えない強固な下地を作り上げます。壁紙選びについても、あまりに薄い素材は下地の動きをダイレクトに拾ってしまうため、少し厚みがあってクッション性のある素材を勧めることが多いそうです。インタビューの最後に、彼はこう語りました。壁紙のひびをゼロにすることは神様でも難しいけれど、そのリスクを最小限に抑え、もし出たとしても目立たせないようにするのが職人の腕の見せ所だ。家は生き物だからこそ、その呼吸を理解して、遊びを持たせながら貼ることが大切なんだ。プロの言葉には、長年の経験に裏打ちされた深い洞察と、住まい手への思いやりが溢れていました。私たちが普段目にする美しい壁の裏側には、こうした職人たちの目に見えない努力と知恵が詰まっているのです。
職人の技に学ぶ壁紙のひびを防ぐ施工の工夫