市営住宅を退去することになった友人が、入居中に良かれと思って行ったプチリフォームのせいで、数十万円の修繕費を請求されたという話を聞き、私は背筋が凍る思いをしました。市営住宅でリフォームをしていいのかという疑問を抱くとき、多くの人が考えるのは「今」の快適さですが、真に考慮すべきは「未来」の退去時です。友人の場合、キッチンのタイルを可愛くしようと、強力な接着剤でタイルシールを貼ってしまい、それを剥がす際に元の塗装まで一緒に剥げ落ちてしまったのが原因でした。このような失敗を避けるために、市営住宅で推奨されるのは、建物の設備に一切の直接的な加工を施さないリフォーム術です。具体的には、既存の壁紙の上に貼る「剥がせる糊」を使用した壁紙や、マキングテープを下地に貼った上から両面テープを使う手法がありますが、これも長期間の使用により糊残りのリスクがあるため、私はより慎重な方法を選んでいます。例えば、壁を飾りたいときは、床と天井を突っ張り棒の要領で支える柱を立て、その柱に対して板を打ち付けることで、部屋の中に新しい壁を作る手法です。これならば、市営住宅の壁には一切触れずに、棚を作ったりテレビを壁掛けにしたりすることが可能になります。また、照明器具の交換も、元々付いていた器具を大切に保管しておき、退去時に戻せるのであれば、シーリングライトをおしゃれなペンダントライトに変える程度は許可不要で楽しめる範囲です。市営住宅のルールは非常に厳格で、たとえ「入居したときよりも綺麗にした」と主張しても、それが元の仕様と異なる以上、原状回復の対象となってしまいます。自治体は個人の美的センスを評価する場ではなく、公有財産としての同一性を守る立場だからです。リフォームをしていいのかと悩んだときは、「これは退去時に片手で取り外せるか」という問いを自分に投げかけてみてください。工具が必要だったり、薬剤を使って掃除をしなければならなかったりするような変更は、すべてリスクを伴うと考えたほうが安全です。市営住宅という、非常に安価に借りられる公共の場を提供されている対価として、建物を尊重し、大切に扱うというルールを受け入れる。その上で、家具や照明、観葉植物などの移動可能なアイテムで自分らしさを表現していくことが、結果として最も経済的で賢明な市営住宅での暮らし方なのだと私は確信しています。
原状回復義務に悩まないための市営住宅向け賃貸リフォーム術