市営住宅に住み始めて驚いたのは、その内装のシンプルさと、時には設備の古さでした。特に私が当選した部屋は築年数が三十年を超えており、トイレには温水洗浄便座がなく、浴室もコンクリートの打ちっぱなしに防水塗装が施されただけのような状態でした。そこで私は、少しでも生活の質を上げたいと考え、自治体にリフォームの可否を問い合わせました。担当者から返ってきた答えは、市営住宅は原則リフォーム禁止だが、模様替え申請を提出して認められれば、自費で特定の工事を行うことができるというものでした。私は早速、温水洗浄便座の設置と、浴室への瞬間湯沸かし器の導入について申請を行いました。手続き自体はそれほど難しくありませんでしたが、工事の内容や使用する機器の型番、施工業者の情報を細かく書類に記入する必要がありました。また、最も重要な条件として、退去時には一切の所有権を放棄するか、あるいは自費で撤去して原状回復を行うという念書への署名を求められました。この経験から学んだのは、市営住宅でのリフォームはあくまで借りている側の責任で行う一時的な変更に過ぎないということです。数週間後、正式に許可が下りて工事が完了したとき、ようやく自分の家という実感が湧きましたが、同時に、壁に釘一本打つのにも慎重にならざるを得ない公共住宅の厳しさも痛感しました。最近では、DIYショップなどで原状回復を前提とした、剥がせる壁紙や置くだけのフロアタイルなどが販売されていますが、これらを使用する場合でも、退去時に跡が残れば修繕費用を請求される可能性があります。私は、自治体のルールを尊重しつつ、申請が必要な大掛かりな変更と、申請不要な範囲でのインテリアの工夫を組み合わせることにしました。市営住宅でリフォームをしていいのかと悩んでいる方は、まずは管理窓口に相談し、何が許可の対象で、何が禁止事項なのかを明確にすることをお勧めします。自分の判断で勝手に手を加えることは、後々のトラブルだけでなく、同じ住宅に住む他の方々への迷惑にも繋がりかねません。決められた枠組みの中で、知恵を絞って自分らしい空間を作り上げていくプロセスは、制限があるからこそ得られる満足感があるものだと、今の私は感じています。